エピローグⅡ ~気付いちゃったのよ

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「そんでさ、式とかめんどくせえだろ。だから入籍だけでいいやと思ったんだ。けど……熱ッ!」  ままやのコロッケは大きい。黄金色のパン粉から煙が立っている。その小判型の揚げたてにかぶりつきながらトキオが言った。  サクッとした衣とホクホクの芋。申し訳程度のひき肉が旨味をプラスする。ソースをビタビタにつけようとするのを隣りの冴がやんわりと手で制す。 「そうなの。私もすっかりそのつもりでいたのに、話してみたら親が花嫁衣裳を見たいって言いはじまったのよ。それでやっぱり親族のみで小さくやる事になっちゃって」 困ったわ、と言いつつ嬉しそうだ。早速ドレスも予約したらしい。  トキオに負けじと冴もコロッケにがぶりつく。野球部の元マネージャー、可愛い見かけとは裏腹に実際はかなりパワフルだ。 「俺、あともう一個」「食べ始めたら止まらないわねー」  仲良く頬張る姿はまさにベストカップル、婚約も調い、いよいよ二人は結婚するのである。 「とりあえず野球部OB会が全力で二次会すっから。俺、幹事な」  きゅうりのぬか漬けをぽりぽりしつつ、大地がのんきに笑った。飲み会好きのOBはここぞとばかりに盛り上がる気満々なのである。 「でもいいのか、二次会『ままや』で。うちはシャレた食いもんは出てこねーぞ」 二人の希望を聞いたところ、この『ままや』を貸し切りにしてアットホームな飲み会をしたいという。確かに一番気兼ねはないが、あまりに普段着な場所である。 「いいんだ。俺、『ままや』の食い放題してみたかったんだもん」 「いいのよ、みんなでわいわいやれるのが一番だもん」 二人が同時に言う。大地学年の野球部は、とりわけ仲間の絆が深いのである。
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