エピローグⅢ ~さすがに終わります

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「大丈夫だ。心配しねえでも星座の説明なんかお手のモンだろ。別にわざわざ暗記しなくたっていいんじゃねえのか」 「解説には何ら不安はない。だがそれでは伝達力に欠けると館長が力説するんだ。詳しさよりも分かりやすさを優先すべきだと。しかし詳しく話せば当然、理解は深まるはずだろう。館長が何を俺に求めているのか全くわからない。不本意だ」  よく見ると原稿の赤字は星のことなど何も触れていなかった。むしろ解説部分はかなり削られ、その合間合間に書かれているのは(ここでにこっと)(最高の笑顔で!)(きらきらの眼差しで語り掛けよう)(明るく!)(お茶目なかんじで)という謎の指定である。  大地は首をひねりながら言った。 「……試しに俺を客だと思って話してみねえか。まずは芳野のやりたい通りで」 「望むところだ」  芳野は指揮棒を持ち、意気揚々と語りだした。 「ではまず夏の星座について基本的な説明をします。東側の最も明るい星がベガ。ベガの右下にアルタイル、ベガから左下にデネブ。この3つが夏の大三角です。真ん中の星の帯は通称天の川、都会でははっきり見えないかもしれませんが、この町では容易に肉眼で確認できます。天体は光の強さで等級が分けられますが最も明るい1等星の数は21個、1等星から6等星までの星の数は全部で約8600個です。夏には4つの1等星を見ることが可能で残りの一つはさきほど説明した三つの星座の他に南の空に赤く輝くアンタレス。それぞれの星の詳細をご説明すると」
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