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「やべえ俺、これ以上心臓もたねーわ。館長……すげえ」
「何でだ! こんな余計な小細工をしない方が話す文字数が断然多いんだぞ。幼児番組じゃあるまいし何故いちいち笑いかける必要がある!?」
「俺、天文台に通いてえ……休憩時間に車飛ばせば……間に合わねえかな」
「来るな。大地が来ても来場数にカウントされない」
芳野は冷たく言い放った。いつもの芳野に戻ってしまい、大地は落胆を隠せない。がっかりの方向性を勘違いした芳野は大地をなだめた。
「大体、来る必要もないだろう。家にいるんだから」
「まあ聞きたいことはいくらでもあるんだけどよ……」
ただしそれは星のことではない。体に聞きたいほうだ。大地は伺うように自分を見ている芳野に思わずふらふらと近づき、煩悩のままに抱きついた。
「なにする!」
「お帰りのハグ、まだしてなかったろ」
「そういえば」
芳野は素直に大地に体重を預けた。
「……だがこれは本当にどの家庭でもやることなのか。人の家の事はわからないが」
「いや、少なくとも俺の知ってる範囲ではどの家も間違いなく朝晩は抱き合ってる」
「でもいちいちキスまでするのか? 俺の家ではまったく気配が」
「してる! シャイなご家庭の場合、見えないところですかさずしているだけだ」
大地はこの嘘を一生貫く覚悟できっぱりと言い切った。
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