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テーブルに投げ出していた携帯が震えだす。
リビングでへたり込んでいた大地は我に返り、秒で喰らいついて通話に切り替えた。
「芳野! 俺やっぱ」
「よう、大地。聞いてくれよー、昨日あの後さあ、冴に言ったんだよー」
「……トキオか」
大地はうんざりと返事をした。親友相手に露骨にがっかりで申し訳ないが、今の大地にとって芳野以外の誰でも失望でしかない。
詳細ははしょるが、トキオは大地の元カノ水沼冴に片思いし、冴を思うあまり先走った言動をするお騒がせな友人である。昨日もそのせいで危うく芳野に誤解されかけた。
他の事なら大抵『いいよ』で済ませる大地だが、まんまと芳野に逃げられた今となってはトキオの元カノ発言が影響している気がして苛々する。しかしトキオは荒れ狂う大地の心境も知らずにぺらぺらと続けた。
「お前がさあ、押せばイケるっていうから俺はさー」
「ちょっと待てお前、朝から酔ってんな?」
「朝からじゃねえよ。昨夜から飲み通しだ。言ってなかったっけ。この居酒屋、オールできるんだよ。でもってさあ聞いて?
野球部の奴らにさ、大地との元サヤ計画はやめにして俺が冴に告るって宣言してさ、あのまま戻った勢いで言ったんよ。冴、めちゃくちゃ驚くかと思ったのにさー、ふへへ。これが全然でさー、んで俺、駄目押しで付き合ってくれって頭下げたらさー、ふふっ」
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