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「トキオという人物はお節介だが友達想いだ。そしておそらくその性格ゆえに親友である大地の行く末を心配しているだろう。無理もない。俺みたいなのが相手では」
大地は驚いて芳野を見つめた。芳野がトキオの事をそんな風に評価していることが意外だった。しかし、実際にトキオは男同士の交際に懐疑的である。だが芳野がそれを気にしているとは思わなかった。
芳野は淡々と御飯を咀嚼しながら続けた。
「俺はトキオに何も証明できないし、説得できる語彙もない。でも大地と俺が幸せそうにしている姿を見れば少しは安心するんじゃないか」
「……」
「結婚のお祝いとしてはズレているが、彼はきっと儀礼的なお祝いを渡すより、親友の幸福を喜ぶと思う。だから直接、俺にできる限りのことはすると伝えておきたい」
「芳野」
大地は箸を置いた。
逆なのだ。芳野が『俺なんかが相手で』というのは絶対に違う。
トキオは大地が芳野に血迷ったように思っているが、この恋愛に芳野を巻き込んだのも、性別に意味がないほど芳野に惚れたのも大地なのである。
でも嬉しかった。芳野が迷いなく幸せという言葉を使ったことが。
こうして同居するようになり大地は日々幸せを噛みしめているが、芳野も同じであるならこれ以上のことはない。
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