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「いつか新しい星をみつけて大地の名前をつける」
大地は目を瞠った。そのまま慌ててしどろもどろになった。
「へっ、俺の名前? や、違うだろ。せっかくの大発見だぞ、自分の名前を付けろよ」
「いいんだ。大地は俺にとって世界でたった一つの星だから」
こらえきれなかった。
「芳野」
ぎゅっと心臓が震えて、大地は飛びのくように立ち上がり、椅子に座ったままの芳野を抱きしめた。
いつもだ。いつもこうして、大きな図体のくせに、小さな芳野に全部を奪われてしまう。
すでにもうこれ以上好きになれないぐらい好きなのに、その一言で、その上限は易々と更新されてしまう。
抱きしめられたまま、芳野は大地の肩越しに窓の向こうを見た。
これまでに沢山の野原や屋上から星を見てきた。どんな場所からも星は変わらずに見える。芳野がどこに行ってもその先々に必ずついてきてくれる。ちゃんとここにいるよ、とでもいうように。
芳野にとって星が友だった。
大地にトキオがいるように芳野には星がある。
星の不変の在り様が好きだった。だが、大地の肩越しに眺める星は、これまでのどの時よりも暖かく輝いて見える。
今日も二人を見下ろす星がきらきらと瞬いた。
_________まるで長年の友人を祝福するように。
【 完 】
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