スター10000☆彡 お礼SS

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『芳野、遅せえぞ!』  校門で、門柱によりかかって笑う大地。  薄いカバンを振り回して、無視しても俺の後をついてくる。俺は一度も待っていて欲しいなんて言ったことはない。それどころか観測で遅くなる日は先に帰れときっぱり言っていたのに、大地はとっくに補習が終わっても暇をつぶして待っていた。  そのうちあきらめるだろうと思ってた。  観測の没頭から我に返ると待ち合わせから軽く一時間も過ぎていることもざらだった。  あわてて屋上から駆け降りる。大地は壁にもたれて寝ていることも、廊下で友人と話していることも、学食で軽食を食べていることもあった。  どの場所を見ても、俺はあの頃の大地の姿を思い出すことができる。  何をしていても、俺を見つけると恥ずかしくなるぐらい大袈裟に手を振るから。  俺なら時間のあてもなく誰かを待つなんてできない。  でも大地はそれをしてくれた。ほぼ一年、毎日。春から夏、秋も、冬もだ。  待つ間、大地は何を考えていたんだろう。  流星でも見つければ、帰るのはぐんと遅くなる。大地の頭上には、月がすでに光っている。  なのに、どんなに待たせても、いつも大地は俺を見つけると嬉しそうに笑う。俺は当然のようにその笑顔を受け流して、ほら行くぞ、と大地をせかす。さんざん待たせたのは自分のくせに、早くしろ、と言うのだ。我ながらよく言えたと思う。  
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