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大地は思わず怒鳴った。
「おい! これどうした」
「あ、やっぱ芳野だよな。そうなんだよ。さっきさ、それらしき人物が脇目もふらずに店の反対側の道を通過してったから、あれーと思ってさ。お前ら一緒じゃねえの?」
「あいつはいつも通り観測するって……」
大地は目を凝らした。芳野はひどく思いつめたような顔をしている。そんなはずはなかった。星を見にいくとき、芳野はいつも好奇心と期待で前のめりになる。高校時代、双眼鏡を片手に観測場所を探す芳野は常にわかりやすく上機嫌だった。星が絡む限り、こんなしょぼくれた姿はおかしいのだ。これじゃまるで恋に苦悩する青年だ。
恋って誰に。俺に?
大地は写真をみたままめまぐるしく考えた。
強引にキスしたあと芳野は硬直し、大地はダメ押しの告白と初のキスで興奮するあまり無言になり会話をしていない。とにかく直接話したかった。そうでないと今度こそするりと逃げられてしまう。
「どうする俺たち追っかけるか? みんなで手分けすれば追いつくだろ」
「やめろ、芳野がおびえる。酔っ払いが集団で追いかけてきたら俺だって逃げる。お前は冴の事でも考えてろ」
大地は言うだけ言って電話を切った。
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