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大地の真剣な口調に芳野の答えが揺れた。
大地は空を見上げる。きっと芳野も見ている同じ空だ。隣で見たいと思った。切実に。
「なあ、答えろよ。俺とキスすんの嫌か」
「嫌とかじゃなく! あ、違うぞ、乗り気なんかじゃないぞ! 生理的に駄目ではないがやる気とそれとは別問題……って、そんなの改めて聞くな!」
慌てふためいた口調に焦っている芳野の顔が目に浮かんだ。たまらなく愛しくなって大地は笑った。
「じゃ、びびっただけか。けど、残念。俺はもっとしてえよ」
「したいとか言うな!」
「言うだろ。好きになったら全部欲しいじゃねーか」
思うままを伝えた。たぶん言葉の選び方は率直すぎて下手だ。だが今は気持ちが切羽詰まっていて、遠回しに口説くほどの余裕がない。
「信じられない、そんな淫らな質問をするとか神経を疑う! よく恥ずかし気もなくするとかしないとか……あっ、うわ!!」
強気で反論していた芳野は突然、素っ頓狂な声を上げた。
言葉にならない悲鳴、それと同時にガッシャーンという派手な物音。
芳野が呻き声とともに沈黙する。大地は噛みつくように言った。
「どうした?! 何があった」
「……なんでも……」
「なんでもないわけねえだろ、なんだ今のギャーは。早く言え!」
「は し ご お ち た」
「んっ?」
思わず聞き返す。芳野は渋々現状を伝えた。
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