野良猫はいつもなまいき

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   ポツ、ポツと降り出した雨は途端に激しく勢いを増した。  ……情けない。  芳野は腕を組んで立ったまま、どんくさい自分を反省していた。よける気にもならず、針のように落ちてくる雨粒を眺めている。  電話を切ってしばし。大地が来ることを待っているような、恐れているような二つの気持ちがせめぎあっていた。  一応、両想いなのだ。子供でもあるまいし、起こりうる出来事に予想はついたはずだった。キスでびびったのかと大地に図星を突かれ、芳野は返す言葉がなかった。  目を凝らしても星が見えない。  わかっている。仮にいくら星が見えたとしても、そこに答えは用意されていない。  自分は生涯、この傷つかない世界に居続けるだろうと思っていた。  なのに今、その世界に居ながらも大地のことを考えている。  見えない星は、その姿を隠すことで芳野にこの世界の外に踏み出すように促している気がした。  芳野が悶々としていると、遠くから慌ただしい足音がした。思考は唐突に打ち破られ、体がびくりと反応する。 「おーい、芳野ぉ!!」 大地だ。 「ほんとに五分だ」 芳野は屋上の端に寄って身を乗り出した。
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