267人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
「昨夜、ぐーぐー寝てたろ?」
「本当は起きてた」
しれっと暴露した芳野に大地はのけぞった。
「あああえええっ?! じゃ、お前、俺が起きてたのも知ってたのかよ!」
「知ってる。身の危険を感じて眠れなかった。その前の夜も」
「なんで」
「もうちょっとで大地に会えると思ったら寝られなくて」
芳野の声が消えそうに小さくなる。凝視している大地の視線が刺さるように痛い。居たたまれず芳野は補足する。
「そもそもずっと慢性的な寝不足なんだ。最近、毎晩のようにお前は電話をするだろう。来なければ待ってしまうし、来たら来たでそっちはすぐ寝落ちだ。俺は延々とその寝息を聞いてるだけの電話で起きてるんだぞ」
「そんなの切って寝ろよ!」
「お前の気配があるのに切れるか!」
大地はその場にストンと腰を下ろして長い足を投げ出した。
「……こっち」
ぐい、と手首を掴まれ引き寄せられる。
しゃがんだままの姿勢でようやく体を支えていた芳野は、あっけなくよろけて大地の体の真ん中に抱き込まれた。
開いたパーカーの下は薄いTシャツ一枚で、大地の体温と同化した綿の肌触りが、素肌そのものみたいに暖かかった。
最初のコメントを投稿しよう!