野良猫はいつもなまいき

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「昨夜、ぐーぐー寝てたろ?」 「本当は起きてた」 しれっと暴露した芳野に大地はのけぞった。 「あああえええっ?! じゃ、お前、俺が起きてたのも知ってたのかよ!」 「知ってる。身の危険を感じて眠れなかった。その前の夜も」 「なんで」 「もうちょっとで大地に会えると思ったら寝られなくて」  芳野の声が消えそうに小さくなる。凝視している大地の視線が刺さるように痛い。居たたまれず芳野は補足する。 「そもそもずっと慢性的な寝不足なんだ。最近、毎晩のようにお前は電話をするだろう。来なければ待ってしまうし、来たら来たでそっちはすぐ寝落ちだ。俺は延々とその寝息を聞いてるだけの電話で起きてるんだぞ」 「そんなの切って寝ろよ!」 「お前の気配があるのに切れるか!」 大地はその場にストンと腰を下ろして長い足を投げ出した。 「……こっち」 ぐい、と手首を掴まれ引き寄せられる。  しゃがんだままの姿勢でようやく体を支えていた芳野は、あっけなくよろけて大地の体の真ん中に抱き込まれた。  開いたパーカーの下は薄いTシャツ一枚で、大地の体温と同化した綿の肌触りが、素肌そのものみたいに暖かかった。
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