267人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
芳野はぼそっと言った。
言いなれない一言で心臓まで痛くなった。大地といると心身に負担がかかりすぎる、と痛切に思った。
答えの代わりに大地の抱きしめる力がもっと強くなる。
温かった。
体温て凄いな、と芳野はその腕の中でぬくもりながら思った。眩暈も迷いも全部受け止めて、ずっと強張っていた指先にまで血が通い始める。
こわごわと目を開けると、すぐそこに大地の顔があった。
心配そうに閉じた目のまつ毛が震えてる。いつも能天気な笑顔ばかり見ているから、芳野は驚いてじっと見つめてしまう。
芳野の視線に気づいた大地は目を開けた。
「なあ、抱っこは嫌じゃねえの? 立てるまでこうしてたいけど、やっぱびびってる?」
「……別に大丈夫」
ぶっきらぼうに芳野は答えた。その答えを肯定するみたいに大地がもう一度頭を撫でる。
「そんならもっかいキスしてもいいか」
最初のコメントを投稿しよう!