はじまりはじまり

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 表現は堅苦しいが芳野の話は告白に等しい。懸命に言葉を紡ごうとする芳野が愛しくて、すぐにでも抱きしめたいほどムラムラしたが、大地は奇跡的な自制心で姿勢を正した。幸いなことに芳野はテンパっていて大地のよこしまな心の動きには無頓着だ。 「関係性の相互確認ができた以上、いつまでも逃げ続けるのは無益だと思う。俺も踏み出すべきだと覚悟を決めた」 「立派だ、芳野」 芳野の宣言に大地も男らしく頷く。待ってましたと掛け声をかけたいぐらいだ。 「大地は脱がないのか」 棒立ちの大地に向かって、苛立ったように芳野が言った。大地はご機嫌を損ねないようにさっそくTシャツの裾をつかむ。 「悪ぃ、すぐ!」 「何をモタモタしてる、脱がなきゃ始まらないだろう。それとも着たままがいいのか」 「いや、できればお互いに脱がしつつ……」 「幼児じゃあるまいし甘えるな! 自分の服ぐらい自分で脱げ!」 芳野はつかつかと窓辺に寄り一気にカーテンを引いた。芳野の気迫に押され、大地は即座に脱いだTシャツをポイと放り投げる。  顔を上げると、芳野のまっさらな背中があった。見惚れるほど綺麗な背骨のラインに、青い血管が透ける白い肌。カーテンと重い曇り空のせいで部屋は薄暗い。ごくりと大地の喉が鳴る。  大地は芳野の手首をつかみ、リビングから寝室に抜けた。
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