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ベッドの横に立って向き合う。
上半身だけとはいえ裸で正面に立つとますます目のやりどころに困った。
見たいが、見過ぎたら芳野が引く。わかっているのに目線はくぎ付けのまま離せない。野球部の大地にとって男の上半身など見慣れたものだが状況が違う。大体、芳野の体はすべすべしてむさくるしさがない。逡巡していると芳野がきっぱりと言った。
「来い」
うぉう。
煽られて、大地は操られたように芳野に引き寄せらせた。
いよいよその時を迎え、むずがゆいような恥ずかしさに襲われる。
「本当にいいのか芳野。始まったらもう……そうなっちまうぞ?」
大地は念押した。もちろん、大地はやる気満々だ。ただ、いきなりスイッチが入った芳野に半信半疑だった。これまでの付き合いでただの一度もギラギラしたところなんかみたことがない。しかしそんな親切心すら芳野には無用の事だったらしく、とたんに目つきが険しくなる。
「さっきから何をぐだぐだ言ってるんだ。俺の手順に不満でもあるのか?」
「ない! バッチリだ! ただちょっと驚いただけだ」
大地は大慌てで心中渦巻く反論を打ち消した。
「恥じらいか」
芳野は大地の両腕をつかんだ。反動で前のめりになる。見上げている芳野の顔が至近距離になった。やべえ勃つ!と思わず体を引いたら、芳野が大地の頬っぺたを両方の手の平で挟んで正面に向かせた。
「集中!」
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