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「あのな、プラスチックじゃねえんだ。生き物なんだからそこは伸縮自在だろ。上か下かなんていうのは物理的な問題じゃなくて気持ちで決めんだよ!」
「だが伸縮率を考慮するとますます」
「いーから! ゆっくり時間かければどうにかなっから。俺に抱かれんの嫌か」
「嫌、じゃ」
大地は芳野を包むように抱きしめた。お互いの素肌がぴったり重なると芳野の心音が波打つような激しさで響いてきた。
そのまましばらくぎゅっとする。
お互いの鼓動がかぶさって体が同化していくような気がした。このまま溶けてしまってもじゅうぶん幸せな気もしたが、少し腕を緩めて顔を上げた。いたたまれないほど赤面した芳野が眉間に皺をよせ、目を閉じている。
大地はわざとその眉間に唇で触れた。
「だ……」
「ちょっとちゅーしてみっから。怖くなったら言え」
芳野の頬を片手で包む。それだけで芳野の体はぶるっと震えた。
ますます固く閉ざした瞼にそっと唇を押し付ける。皮膚の薄い瞼は頼りないほど柔らかい。
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