はじめてのつぎの日

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 そこから突入した大学生活は過酷な遠距離恋愛の幕開けだった。  なんと芳野は星の世界に没頭すべく、電車で三時間もかかるような遠方の大学に進学したのだ。合格を聞いた時、大地は胸がつぶれる思いだった。  喜ぶ芳野には申し訳なかったが、何といっても三時間。  ろくに会えない。  もう一つ受かった大学は市内だったため、そちらを選べば会うのに支障はない。芳野の選択に大地は密かに期待した。  だが芳野はうきうきと学部の説明をし『国内で一番でっかい天体望遠鏡を所有しているんだ』という単純明快な理由で大地の元から羽ばたいていった。  デカくても小さくても見る星は一緒じゃねーか!   大地はいじけながらも健気に見送りにいった。  でも芳野は真顔で『わざわざどうした、暇なのか?』と聞いてくるほど鈍感だった。その態度には離れ離れになる寂しさは微塵もなく、大地の絶望に拍車をかけた。  そうこうしているうちに大地は社会人として働きはじめ、小さな役場で雑務全般をこなす日々が始まった。わかっていた事だがお互いの環境はがらりと変わった。  芳野は大学生。学生と社会人というさらなる溝。  ただでさえ意思の疎通に疑問が残るのに、すれ違いは倍加した。
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