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体に落とすキスが体温を上げていく。そのたびに芳野が掠れた吐息を漏らす。撫でるだけでなく胸の尖りをつまんだら、声にならない悲鳴を上げた。
「……あ……っ……」
大地はそっと体を起こした。芳野はもう逃げようとはしていなかった。ただ次々と与えられる刺激を受け止めるだけで精一杯に見える。
厳重に顔を隠そうとしていたその腕をつかんで、ベッドに押し付けた。芳野の困った顔は何度も見てきたけれど、これほど悩ましい表情ははじめてだった。噛みしめていた唇が赤く濡れている。
自分の指や唇で堅物の芳野がほどけていくさまに大地は我を失った。
衝動的に抱きしめて、息もつけなくなるような口付けをした。長いキスのあとで芳野が言った。
「大地……俺、みっともなくないか」
「なんで」
「俺、人より欠けてるものが多いって自覚はあるんだ。だけどこんなに晒したら何も取り繕えない」
芳野の目がいつにもまして大きく艶めく。その目を見たら、ちょっとづつ進もうとしていたのに我慢できなくなった。
芳野が畏れるものは、大地にとって何一つ問題にならなかった。大地はきっとずっと芳野が好きだろうし、芳野が恥ずかしいと思うような些細なことは、むしろ大地にとって愛しいだけでしかない。
「どんな芳野も絶対に嫌いになんかなんねえよ」
大地は覆いかぶさって芳野の胸を舐めた。吸い上げると芳野の指が、命綱のようにシーツを握りしめた。
「どうせなら俺につかまれ」
「でも、もっとくっついちゃうじゃないか、そしたら」
「そしたら?」
「好きでたまらないみたいだ」
「それでいいじゃねーか」
大地はこぼれるように微笑んだ。
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