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キスの位置をゆるやかに下げていく。芳野は声を出すまいとしてますますしかめ面になった。時折視線を合わせると潤んだ目が泣いてるみたいに光る。
「な……芳野、いいだろ」
大地の手が芳野のジーンズの隙間から滑り込んだ。芳野がもがいた。
「そこはよせ! やめろ、無理だ」
「なんで? 気持ち良くねえか?」
「良いとかそういうんじゃなくて……お前、どこでこんな触り方覚えたんだ。俺は考えられなくなりそうで怖い。そんな風になったことがない」
大地は手を引き抜き、赤い顔をした芳野をあやすようにキスをした。今度は見つめたまま、芳野をずっと見ていたかった。
「あんな、これまだ序の口だぞ」
「嘘だ、俺……も、恥ずかしくて、死にそうだ……」
途切れがちな呼吸の狭間で芳野は言った。大地は唇でふさいだ。可愛いと愛しいをうまく言えない分、口づけになった。
芳野の髪を撫でる。瞬きもできずに大地を見つめたままの芳野を見ていると、無性に優しい気持ちになった。囁くように告白する。
「ホントは俺もすげえ緊張してる」
「……大地も?」
「おう。一緒だから。でも大丈夫。ちゃんと大事にする。だから、無理とか言わねえで……しよ?」
ずっと心臓がばくばくしながら抱いている。あんまり苦しくてパンクしそうだ。これまでの長い間、芳野とのことを想像したけれども、こんなに可愛いと思わなかった。
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