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大地は深いため息をつき、毛布を手離した。つくづく芳野に甘いと思う。
「……もういい。寝ろ」
芳野が硬直している。
「だからさ、昨夜もその前もろくに寝てねえんだろ。でもって今夜も流星が流れるんだろ。だったら今寝て、夜に起きよう。俺も天体観測付き合うからよ」
「大地……!」
大地にとっては残念なことに、芳野は心からの笑顔になった。本日最高の笑顔と言って過言ではない。途端に元気になる。
「そっ、それなら大地も天文ソフトのアプリを携帯に入れないか。最近のアプリは優秀なんだぞ、星の詳細情報だけじゃなく観測予測時間やISSの通過経路まで」
「いーから寝ろ」
「アプリが面倒ならとりあえず星座早見盤で今夜みられる星の説明を」
「寝ろ!」
大地に一喝されて、芳野は毛布を引きずり、するりとベッドに納まった。
大地は仁王立ちで芳野を見下し、自分も同じベッドに入った。壁際に逃げそうになる芳野を捕まえて体の下に腕を差し込み、後ろから抱っこする。
「俺も寝る」
「近い」
「しょうがねえだろ。俺だってベッドがいい」
シングルの狭いベッドは長身の大地には窮屈で、しかもそこに二人だと、身を寄せ合わなければ確実に落ちそうだった。それをいいことに大地はさらに芳野に密着した。
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