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「続き、また今度な」
「……う。」
「今度は俺が芳野のアパート行ってもいいか」
「……いいけど、遠いぞ」
「電車だとあんま本数出てねえけど、車で高速使えば結構何時でも行けっから。卒業したら芳野は大学院行くんだろ。勉強とか論文とかやんなきゃなんねえんだから俺から行く」
「いい。大地だって仕事があるだろう」
「少しは欲しがれ」
大地の口調が和らいだせいか芳野はホッとして力を抜いた。
強張っていた足の間に大地が自分の足を絡ませてくる。ぬるま湯につかったような温かさが芳野の肌に伝わった。何でも包み込んでしまう包容力がいかにも大地である気がする。
「体温高いな」
やっと芳野がいつもの雰囲気に戻って微笑んだ。
「おう、俺はあったけーぞ」
大地はすかさず言った。それが得意げな子供みたいで、芳野は今度こそ安心して体の緊張を解いた。
大地の体温にくるまり、そのまま吸い込まれるような睡魔に襲われ、くうくうと眠った。
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