はじめてのつぎの日

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 しかし大地はあきらめなかった。  友達と会っても、同僚と遊んでも、大地の胸の中心には芳野がいて、大きな満月みたいに煌々と存在感を放っている。意味不明な宇宙の話をされているのにも関わらず、大地にとって芳野との時間は常にピカイチだった。  大地は事あるごとに電話やメールをし、会いに行った。  芳野は相変わらずだった。嬉しいのか嬉しくないのか微妙な表情で、そのくせ別れ際には絶対に大地の姿が見えなくなるまでじっと立ち尽くしている。  何度目かの季節が巡って、ようやく芳野から『俺をずっと掴まえていてくれ』と言われたときは、昇天しかねないほど嬉しかった。  たぶん芳野は酔っていたし、その言葉の重みにさほどの自覚はなかった。だが大地は違った。ようやくの手ごたえに俄然はりきり、タガが外れた。  数年に及ぶ頼りない想いが一気に両想いになったのだから無理もない。恋人の自覚が空回りし、毎晩電話してたら芳野にウザがられた。  そりゃあそうか、とも思う。  芳野は天体観測が趣味なのに毎晩邪魔してたら怒るに決まってる。友達と恋愛の話をした時だって、束縛のきつい彼女の話をきくと面倒くせえと思っていた。その状態に自分が陥るという矛盾。  本当にらしくないと思う。 『大地って誰とでも友だちって感じ。彼女になったってぜんぜん特別って実感ない』それが原因で初めての彼女とは別れたぐらい大地は淡泊な性質だったのだ。
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