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大地はあらためて勝谷を見た。
仕事終わりの作業着姿がいかにも逞しい。男女問わず友人の多いナイスガイなのに、未だに浮いた噂がない。昔から『彼女作らねえんスか?』と聞いてもはぐらかされるばかりだった。
だが、いつもきれいな飲み方をする勝谷が酔いつぶれたことがあって、その時たまたま店の手伝いをしていた大地はその理由を知ってしまったのだ。
『かっちゃんも相手が悪かった』
『気の毒じゃが智君はもうタケちゃんのものだからのう』
『大体、遅いんじゃよ、手を出すのが! ぐず!とんま!』
なぜかその頃から勝谷には三人のじーさまが付きまとっており、その三爺がこぞって失恋を慰めるため、あらかたの事情がわかってしまったのだ。
ともくんって……今、『君』っつったよな?!
もしかして勝谷先輩って男が好きな人?
それはまさにうってつけのタイミングだった。
傷心の勝谷には悪いが、大地はその頃、切実に悩んでいたのだ。
芳野への好意が高まるに従い、その先の具体的なラブラブをどのように執り行なえばよいのか。それはそれは深く懊悩していたのである。
漫画や小説に書いてあるそれは、肝心のところでぼやけたり突然シーンが切り替わったりして詳細がよくわからない。なんとなくの想像はついたが、強引に事に及んで華奢な芳野を傷つけでもしたら大変である。(大地にも体格差の自覚はあった)
ネットの海をさまよい、動画を漁り、深入りして危険なサイトに引っ掛かりかけるほど調べたが安心できない。
一番の早道はその道の人に指南してもらうことだが、そんな知り合いはこの田舎町で容易に見つかるものではない。
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