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芳野はコツコツした作業が得意である。
封筒を手に取り、書類を入れて糊付け。
スポッといれてペタンと封をする。スポッとしてペタン、スポッとしてペタン。単調な繰り返しだがまったく飽きない。
人には向き不向きがある。
大学に入学してすぐに芳野はアルバイトを始めた。目をつけたのは学内バイトである。道に迷う心配がないし、移動のロスタイムもない。夜は天体観測をしたかったから、無駄なく稼げることが重要だったのである。
しかし意気込んではじめたバイトは散々だった。(むしろ相手にとって)
一番初めは大学生協で、芳野はその不愛想な接客で不評を買った。何度となく笑えと言われたが真面目にやればやるほど怒った顔になる。
しかもその作業は客が手伝いたくなるほどマイペースだった。トラブルが続き、店長は芳野がシフトに入ると胃を押さえるようになった。
しばらくして教務課から特別なお願いが発令され、芳野は学食の手伝いに回された。
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