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一時間か……
芳野の眉間に皺がよる。
答えた通り用事はない。仕事が終わったら資料館の屋上に忍び込んで天体観測をするだけだ。観測仲間の佐倉も来ているだろう。いつものパターンである。しかし今日は週末……
ちらり。芳野は壁掛けの時計を見た。さらに眉根が寄る。
芳野は猛然とスポッとしてペタンを繰り返した。
時計を見るたびに加速がつく。そのあまりの速さに『手が見えない』『風を切る音が』などと周囲がざわついている間に段ボールは空になった。
「観測がんばってね!」
芳野は『お疲れ様です』と職場に向かって一礼した後、すたたたたと小走りで去った。
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