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両想いになってキスをして、そこから先に進めないまま二人の遠距離恋愛は続いていた。
変化があるとすれば、大地が毎週のように芳野のアパートに通うようになった事であろう。
電車で三時間の距離は、乗り継ぎや待ち時間のない車だと二時間強。週末、大地は仕事を終えるとまさに言葉通り高速を飛ばして会いに来るのだ。
「芳野、ちっちぇえな。ふふ」
「うるさい。そっちこそ何を食べればそんなに伸びるんだ」
「わかんねえ。牛乳は毎日飲んでたけど」
腕の中の芳野に大地が嬉し気に呟く。確かに大地の体は大きい。腕も太くて肩も厚い。むしろどうしたらこんな風に大きくなるんだろうと思う。
横を歩いている時代には気付かなかった。手をつないだり、抱きしめられるようになってその違いを思い知らさせる。
だが、大地はとっくに知っていたのかもしれない。昔からずっと守るように扱われていた気がする。
芳野は大地を見上げた。背伸びをしても届かない。
「ぎゅうにゅうか……」
「あ?」
謎の呟きに大地の気がそれ、芳野はその腕から逃げ出した。
動悸がする。
がしっと捕まえられた腕の力がまだ体に残っていた。離れてもまだ気配が纏っている。芳野は冷蔵庫に直行し、牛乳のパックを取り出すと一気に飲み干した。
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