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「気にすんな、そりゃ俺だってせっかくの夜を棒に振ったとは思うけどよ」
爽やかにフォローをいれてはいるが、要はヤリたかったというアピールである。
「迂闊だった。こんな機会はめったにないのに!」
激しく落ち込む芳野に、猛然と愛しさがこみ上げてきた。そうかそうか、と抱きしめたくなる。大地はさっそく上着を脱ぎかけた。
「俺は今からでもいいぜ」
だが、芳野はそんな大地を押しのけて窓辺に立つと、太陽に向かって大きなため息をついた。
照れ屋か。可愛いじゃねーか。大地はその背中を微笑ましく見守る。しかしこれに続く芳野のまさかの大胆発言に大地は動転した。
「カメラを用意すべきだった。大切な夜だったのに」
「ちょ、そこまではいいんじゃねえの? 確かに記念すべきものだけど動画はさすがにマニアックってか……でも、まあどうしてもっていうなら……俺もオカズ用にもらっとくけど、でもよ、それはこの次でよくねえか。まずは突っ立ってねえでやろうぜ。な?」
大地は話しながら赤くなり、焦りがちに自らのTシャツに手をかけた。
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