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「でさ、例の星の町プロジェクトに地域の人も参加してもらうことになったんだ。けその調整役がうちの課に振られてさ、毎日打ち合わせと説明ばっかなんだよ。勝谷先輩とか商店街の人とか、すげえ協力的でそれは嬉しいんだけど、皆言うんだよなー、星なんかで観光客って来るんかなって」
「来るだろう、星ほど魅力に満ちたものはない」
真顔で芳野は言い返した。
こたつで大地と向き合いながらの夕飯である。二人は食べながら会えなかった間の近況を報告しあう。何度もくるうちに出来上がったいつもの流れだ。
大地は道中買ったおにぎりの残りを豪快に頬張った。運転しながら食べるので、大抵、片手でも大丈夫なものが多い。
「でもよ、実際、先行して星ツアーをやってみたんだけど、試しに連れてったトキオなんか見てるだけで眠くなるって」
「誰だその馬鹿は」
芳野の脳は星以外にメモリーを使用しない仕様である。特にご飯を食べているときは集中しているので遠くに追いやられた記憶を呼び出すのに時間がかかる。
「俺の親友で同窓会の日にお前に身を引けって言ってきたやつ」
「あー……」
思い出すのと同時に、不愉快な言い合いまで蘇って芳野は仏頂面になった。友達思いだがお節介なトキオが芳野は苦手である。その沈黙を疲労のためと勘違いした大地は、心配そうに顔を覗き込んだ。
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