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だから肘枕で頬杖を突き、寝大仏のように転がっている大地は驚異だ。そのリラックスぶりを見ていると、どちらがこの家の主なのかわからなくなる。
大地は深夜のお笑い番組がお気に入りのようで、賑やかな画面を見て笑っている。
「なあこのコンビ知ってる? ハナヒロってんだけど」
「ほう。知らん」
「見てろって、そろそろハトが来るから。ほらきた! くっだらねえ、ふふふ、ほらこのダンスの切れ味の良さ!」
「意味がわからない。雑談をしてたのになぜ急に踊りだすんだ」
「これがハナヒロだかんな」
大地は笑いながら、次々と登場するお笑いコンビを芳野に教える。こんなに記憶力がいいのに、なぜ学生時代、何も覚えなかったのか不思議でならない。
番組のエンディングテーマが流れたので芳野は天体望遠鏡を取り出し、レンズを磨き始めた。同時にパソコンも立ち上げて観測記録に日付をいれる。その途端だった。
「芳野」
テレビが消えて、大地に呼ばれた。低い甘い声。大地が意識しているかしていないかはわからないが、この声にはいつも同じ欲求が滲んでる。
イラスト裏話:https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=288
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