Talk to me about milk.

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 芳野はぎくりとして正座になった。要件は薄々わかっていたが、一応聞き返した。 「なんだ」 「こっち。来いよ」 「だが……」  今夜は月がきれいである。観測にふさわしい。しかし大地は、じっと芳野を見ている。星と大地の狭間で芳野は軽く途方にくれた。  大地の目は色々に変化する。無類に人懐っこく輝くかと思えば、鋭く突き刺さることもある。だが、この熱っぽい眼差しは言葉よりも物を言う。  芳野はおずおずと大地の傍に行った。風呂上がりの大地は前髪が降りて、いつもと雰囲気が違う。近づくと待ちきれないとばかりにぐっと腕を引っ張られた。体が下に傾いた途端、伸びあがった大地の唇が重なる。初めてでもないのに体がすくんだ。 「よーしーの」  大地はさらに引っ張って、芳野を隣に寝転ばせた。横になった姿勢で二人はそのまま向かい合う。じっと見られて芳野は無言になる。大地は真面目に言う。 「なあ、今日って絶対、星見なきゃダメ?」 「いや……見たいが」 「俺は絶対芳野に触んねえと辛いんだけど、ダメ?」  大地はそう言ってふたたび唇を重ねてきた。  ずるいと思う。全然返事を待ってない。  芳野は目をつぶって緊張に耐える。大地は一度同衾してから遠慮がない。もっとも同衾したと言っても、触れ合ったぐらいで、そこから先は進展していなかった。芳野が未だに怯んでいるからである。  包み込むように回した大地の手が芳野の背中を撫でる。  はじめはトレーナーの上から、優しくゆっくり。だがすぐに裾から入り込んで素肌に触れてきた。
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