愛猫家は語る

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「まあ、まずは星空だ。お前んとこの芳野君もここの星は天下一品だって言ってんだろ。それ以外のところは段々整えていけばいいんじゃねーの。……で、そっちはどうなってる?」 「押しまくりっすよ!」 いたずらっぽく声をひそめた勝谷に、大地は満面の笑みで答えた。 「だって俺ら正々堂々と恋人同士になったわけで、そしたらもう、会いたくってしょうがねーんですわ。でもアイツはどうなんかなあ、毎週ってやっぱウザいですかね。いっつも玄関で俺を見つけると、困ったような顔されんだけど」 「そりゃ驚くだろ。その図体が玄関前で待ち構えてたら」 勝谷に苦笑され、大地は腕を組んで真面目に言った。 「芳野はあんまり友達とかいないんすよ。だからすげえ警戒心強いんです。ずっと連続で行ってたせいか、先週は向こうから絶対来るなって言ってきて。がっかりっすよ」  大地はしかめ面になる。珍しく芳野から連絡してきたかと思ったら有無を言わさぬ断りの電話である。気負っていた分落胆も大きい。 「そりゃ、向こうだってやらなきゃならない勉強もあるだろう」 「まあそうですけど……」 浮かない表情で大地は語尾を濁した。星に夢中なのは重々承知しているが、二人の時間は貴重なのである。勝谷は呆れて言った。 「お前、そんなにマメだったっけ?」 「芳野に関しては仕方ないんですよ」 一途な男は深刻そうにため息をつく。勝谷ははーん……と言ったきり、まじまじと大地を眺めた。小学生からの付き合いだが、こんなに恋しちゃってる大地は見たことがない。大地は言われてもいないのに携帯を取り出し、芳野の写真を表示した。
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