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「どうした、ご機嫌ななめか。待たせすぎたか?」
「そうじゃない。お前が家から出るなというから論文の続きを……入れ」
「入れていいのか?!」
ちょっとした語尾にも過剰に反応する大地を芳野は睨んだ。
「お前の頭にはそれしかないのか」
芳野は大地の腕から逃げてリビングに移った。専門書が積み重なって塔を成し、床には打ち出されたレポートが散乱している。大地の目線をかばうように芳野は書類をそそくさとかき集め、ファイルに突っ込んだ。
「すげえなこれ全部卒論の?」
「それもある。何か飲むか」
「書いてていいぞ。俺、適当にしてるから」
大地はさっそくネクタイを緩めた。シュッと布の擦れる音がする。芳野はその仕草に顔を上げ、慌ただしい瞬きをした。
鳴たん挿絵裏話:https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=296
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