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大地は口ごもった。
トキオが相手ならうるせえの一言で済ませられるものが、芳野を前にすると息をするのもつらい。
これぞ恋のなせる業、母が全く空気を読まずに『まあ、栗入り羊羹!栗が入ってると嬉しいわよねえ』などとはしゃいでいるのが煩わしい。
芳野はしばしその腕を凝視していたが、突然きりりと顔を上げた。
「話がある」
「おっ、おう!」
「お邪魔してもいいだろうか」
「あっ、上がれあがれ!! かーちゃん、お茶入れて! 店の業務用の安い茶葉じゃなくてとっておきの玉露!!」
「はいはいはい」
大地は激しく首をぶんぶん上下して頷くと、芳野に歓迎の意を示した。母が張り切って台所に消える。芳野は礼儀正しく靴を脱いで揃えると、失礼致しますと一礼して家に上がった。
鳴たん挿絵裏話:https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=322
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