気まぐれろまん

最適解にゃ

「この距離だ」

　思いがけず間近で見下ろした芳野の横顔は美しかった。接触している腕の一部には軽すぎる重みと、ささやかすぎる体温が伝わってきた。

「俺は大地とこれぐらいの近さでいたい。だから今のままではあまりに遠すぎる」
「よ……」
「だとすれば、俺がこっちに来るのが一番合理的だと思った。俺のふるまいは時に奇矯だったり突飛だったりするかもしれない。だが、俺としては一緒にいるために最も合理的な最適解を見つけたつもりだ。嫌か」
「ないないない！　嫌とかあるわけねえ！」
「そうか、良かった」

　芳野は大地にもたれたまま、ほっとしたように微笑んだ。

鳴たん挿絵裏話：https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=327