水魔法師ウィルの普通じゃない日

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レッドから驚きの言葉を聞き冷や汗が流れる。 まさかとは思うが、それを否定するだけの材料もない。 警備の人間の顔なんて分からないし、警備だと確信する手段もない。  服装だけで判断していたがよくよく考えてみれば、男は身分を明かしていなかった。 「・・・マジで?」 『マジマジ』 慌ててもう一度ドアを開けに行った。 『ウィル!? おい! どこへ行くんだよ!?』という声が漏れて聞こえるが無視だ。 ―――駄目だ、もういない・・・。 ―――まぁ俺の部屋は角部屋だからな。 ―――俺の聞き込みが最後だったんだろう・・・。 ドアを閉め部屋へと戻った。 もちろん、厳重に鍵がかかっているか確認した。 『ウィル? 突然どうした?』 「さっきの奴、もういないかなって」 『そりゃあいないだろ。 早く撤退したいだろうし』 「もしアイツが本物の犯人なら、今すぐに追いかけた方がいいよな?」 『は? どうして?』 「捕まえに行った方がいいだろ?」 『いや、それは流石に危険じゃ』 「考えているこの時間が無駄だ! 今の俺ならさっきの警備の人の顔を思い出せる! 忘れる前に行ってくる!」 『あ、おい待てウィ――――』 問答無用に通話を切って部屋を出た。 相手が犯人だとすれば危険だが、そうだと分かっていれば水属性のウィルは有利なのだ。 火属性を相手にして怖いのは不意打ち。  それは先程玄関前の一件で逃している。 犯人を捕まえれば当然大手柄で注目されること間違いないのだ。 ―――まだこの寮にいるのかもしれない。 ―――他の階を捜してみるか。 そう思い一通り全ての階を見て回った。 だが警備の服を着た人は影も形も見つからなかった。 ―――畜生ッ! ―――一体どこへ・・・。 今度は寮を出て外へ向かう。 まだ遠くへは行っていないと思い寮の周辺を走って捜し回った。 すると数十分後、人ごみの中で銀髪の男性を発見する。 ―――見つけた! 近くで顔を確認すると先程の男と一致した。 だがそこで疑問が浮かんだ。 ―――どうして私服に着替えているんだ? ―――やっぱりアイツは本物の警備員ではなかったんだな!? 見失う前に男に駆け寄って声をかけた。 「おい! 待ってくれ! おい・・・ッ! アンタだよ!」 全然気付かれなかったため肩を掴み振り向かせた。 男は驚いた顔をしている。 「あ、貴方は・・・」 「貴方ですよね!? 放火魔の犯人!」 「はい?」 銀髪の男は首を傾げ不思議そうにウィルを見つめている。 演技なのかもしれないが、動揺は見られない。 「さっき警備員になりすましていたでしょう!?」 「い、いえ、僕はちゃんとした警備員です」 「じゃあその証拠でもあるんですか? 本物ならあるんですよね? あるなら見せてくださいよ! 早く!!」 すると男は困った顔をして観念した。 「・・・証拠は持っていません」 「ほらほら! やっぱり貴方が犯人だ! 今から貴方を逮捕しに」 「ち、違います! 確かに警備員にはなりすましました。 だけど犯人ではない」 「え? じゃあどうして警備員になりすましを・・・」 話をしていると遠くから二人の男の声が聞こえてきた。 「見つけたぞ!」 「そこを動くな!」 ―――・・・え、誰? あまりの急展開に頭が追い付いてこない。 しかも男たちは走って向かってきているのだ。 自分が追われる心当たりはないため、銀髪の男を追っているのだろう。  もしかしたら自分と同じように考えて、とも思ったが明らかに学園の関係者ではなく雰囲気もどこかおかしい。 更に銀髪の男が背中を向けながら言った言葉で怪しさが一際増した。 「ちッ、居場所がバレた。 ごめん、僕はもう行かなきゃ」 「え、まだ話は終わっていな」 そう言っている頃には既に銀髪の男は走り去っていた。 ―――一体何だったんだ? ―――犯人じゃないなら、どうして警備員になりすまして事情聴取をする必要がある? ―――それにあんな怖そうな男たちに追われているなんて、何故・・・。 そう思いながら複数の男たちの方へ視線を移そうとすると、突然目の前に現れた。 一人は先程の銀髪男を追いかけ、何故かもう一人はウィルの前にいる。 「お前、今あの男と話していたな?」 「え? いや、確かに話していましたけど俺とあの人は初対面ですよ?」 「怪しいからお前も始末する」 「はぁ!? ちょっと言いがかりはよしてくださいよ!」 あっという間にウィルは男に捕まり連行されてしまった。
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