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「だから! 俺は無関係だって言っているでしょう!?」
ウィルは黒色の汎用型浮遊車に乗せられた。 もちろん抵抗はしたが、正直なところ何が起きているのかよく分からないため強く動くことができない。
相手は怪しく思えるが、先程の警備の男もかなり怪しいのだ。
「一体どこへ行く気ですか! 何度も言いますけど、俺とさっきの人とは本当に初対面で! 何も分からないんです! さっきの人は何なんですか!?」
「・・・」
両脇を男たちに固められた中でまくし立ててみたが、ほとんど反応がない。
「貴方たちとのご関係は!? ほら! 俺は何も分からない! 反論することができないなら俺を解放してくださいよ!?」
「あの男と関わった者は問答無用で始末する。 安心しろ、お前だけではない」
「そんな理不尽なッ!」
どうやら助手席の男がこの中で主導権を握っているのだろう。 だが現状車から飛び降りることもできず為すがままの状態だった。 見る見るうちに知らない場所へと移動し、辿り着いたのは大きな施設。
無骨な造りの建物で中の様子がまるで窺えない。
「ここは・・・?」
「降りろ」
「ここは何をするところなんですか?」
「・・・」
必要以上のことは話そうとしない。 男に連れられるまま施設へ入ると、そのまま薄暗い地下へと移動した。 暗証番号であろう数桁の数字を入力すると扉が開く。
普段生活している中ではあまり見ない作りだ。
「じきに戻ってくるから大人しく待っていろ。 もっともその時がお前の最期になるがな」
「そんなことを聞いて待てるわけがないでしょうが!」
男はニヤリと笑うと何も答えずに扉を閉めた。
「あ、おい待て! 待てって! ここを開けろ! ったく・・・」
抵抗しても無駄だと分かると、部屋の中を確認しようと見渡した。 そこで初めて部屋にいるのが自分だけでないと気付く。 同じ年頃、というより見覚えのある顔の少女がそこにいた。
「あれ、俺以外にも先客がいたんだ。 災難だったよな、って、あれ・・・? 君は確か、ルーシィ・・・?」
「ッ・・・! どうして、私の名前を・・・」
今朝寮で部屋を放火された少女であるルーシィだ。 ただ向こうはウィルの顔に見覚えはなかったようである。 名前を言い当てられたことに恐怖心を抱いたのか、少しずつ後退っていく。
彼女の両手は後ろで縛られていた。
「いや、俺は危険な男じゃないんだ! 安心して! ほら、今朝通り魔放火事件が起きただろ? その時に君の部屋へ駆け付けたんだよ! ほら、俺水属性だからさ」
「あ・・・」
「でも君はあんなに怯えていたし、俺のことが記憶にないのは仕方のないことだと思う」
「私と同じ寮の生徒だったんですね」
「そういうこと。 ところで君はどしてここにいるの? 俺と同じ理由かな?」
「・・・」
「あ、その前に縄を解いてあげようか」
彼女の縄を解き対面して座り込んだ。
「話を聞かせてもらえる? 俺、よく分かんなくて。 何でもいいから知らないかなって」
彼女は気まずそうに顔をそらすだけだ。 だから率先して自分のことから話そうと思った。
「じゃあ先に俺のことから話すよ。 銀髪の男の人と話していたら、急にさっきの男に捕まったんだ。 話しているだけで『怪しいからお前も始末する』とか急に言われて、ここへ来た。 君も同じ?」
「銀髪の男の人・・・」
「そう。 もしかして知り合い?」
「私と同じ髪色の?」
「言われてみればそうかも?」
「その人、私のお兄さんだわ!」
「え、マジで!? ・・・え、聞きにくいんだけど、君のお兄さんは何かをやらかしたとか・・・?」
ルーシィはその言葉に首を横に振る。 兄の名はシリウスと言うらしい。
「どこでお兄さんと会ったの?」
「寮だよ。 何故か警備の恰好をして聞き込みをしていたらしいんだ。 君のところにも来なかった? 『怪しい人を見かけませんでしたか?』とか聞かれたけど」
「私は学園へ向かう途中にさっきの男の人たちに攫われたの。 だから会っていない。 お兄さんはきっと、攫われた私を救い出そうと男たちの行方を追っていたのかもしれない。
この場所を探しているんだわ」
「なるほど! だから警備の真似を・・・。 でもどうして、男たちから逃げる必要が?」
「捕まってはならないから」
「何故?」
「・・・」
しばらく待ってみたがルーシィは口を頑なに開こうとしなかった。 正直、ウィル自身何故捕まったのかを知りたかったのだが、この状況で無理強いすることはできなかった。
「・・・深い事情がありそうだな。 できるなら俺も協力したいんだけど、それでも話してくれない?」
「・・・ごめんなさい」
「分かった、無理には聞かないよ」
「私の方こそごめんなさい。 貴方まで巻き込んで」
「あ、名前言ってなかったね。 俺はウィル。 別に大丈夫さ、ここから出ることができるなら。 脱出するために君も手伝ってくれる?」
「えっと・・・」
そう言うもルーシィは乗り気ではなかった。 というより、脱出なんて不可能だと思っているようだ。
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