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「俺はさっき言った通り水属性だ。 君は土属性だっけ? そう聞いたことがある。 んー、水と土を使ってここから脱出するには・・・」
「・・・」
「ここは室内だから土を扱うのは難しいよなぁ。 でも土は出せるんだよね? とりあえず色々方法を考えたいから、土を出してもらえる?」
「・・・」
ルーシィはウィルの顔と自身の手を見ながら顔を伏せた。
「どうしたの? さっきから黙り込んで」
「あ、私、そんなに上手く土を扱えなくて・・・」
「魔法の使い方はどの属性も一緒だよな? なら俺が教えてやるよ」
「ううん、本当にできないの」
彼女は首を横に振り頑なに拒んだ。 その様子はどこか不自然に思える。
「でも試しにやってみないと分からないじゃないか」
「・・・」
しばらく沈黙が続いた後、彼女はポツリと言った。
「・・・私は本当は、土属性じゃないの」
「え? じゃあ何?」
「もう巻き込んでしまったからウィルには言っておく。 ・・・私は魔法を無効化できるの」
「・・・はい? え、そんな魔法は聞いたことがないけど」
ウィルの知っている限りそんな魔法が存在することを知らない。 魔法には属性がありその理から外れることがないというのが常識だ。
無効化に何か属性があるのかも分からず、魔法かどうかもよく分からなかった。
「そう。 魔法を無力化するなんてあってはならないから」
「だけど君は使えると?」
それに彼女は頷いた。
「だから国中に広まる前に私たちの家系を滅ぼそうとしているの」
「それが男たちの狙い?」
「うん」
「確かに魔法を無力化できてしまえば、色々と問題が起きそうだもんな・・・」
「私たち家系の存在は邪魔なんだって。 表に能力を出したら怖がらせると思って黙っていたの」
「無力化ってどんな魔法? 使って見せてよ」
「・・・分かった。 水を出してもらえる?」
ウィルは手の平の上に水を出した。 それにルーシィが一呼吸入れ手をかざすと、一瞬で消滅した。 属性のぶつかり合いで魔法が消滅することはあるが、これ程静かに魔法が消えることはない。
「うわッ、すげぇ! 本当に俺の魔法を無力化した! あれ? でも今の消え方、どこかで見たことがあるような・・・」
「貴方はこんな私でも怖くない?」
「もちろん。 怖くないよ、カッコ良い魔法じゃないか。 無力化を使えるのは君たちの家系だけなんだろ? だったら貴重な存在を滅亡させては駄目だ。 早くここを出て国に認めてもらわないと!」
「・・・ありがとう」
彼女は嬉しそうに笑った。 ここに来て初めて彼女の穏やかな顔を見た気がした。
「じゃあ脱出するのを手伝ってくれるかな?」
「うん。 でも私、何もできないかもだけど・・・」
「知恵を出してくれれば十分だよ。 まぁまずは、俺が入ってきたこの扉を突き破る方法から考えるか・・・」
入る時に見た暗証番号制の扉では開けるのは難しいだろう。 何桁あるのかも分からないため当てずっぽうで開くのは不可能。 となれば物理的に開けるしかない。 そう思い手を差し向ける。
「ウォーターカッター!」
水を高圧で放出しながら扉を切ってみた。 簡素なものならスパッと切れる魔法だが、流石に鉄の扉ともなるとビクともしない。
「俺の必殺技でも駄目なのか! 結構これ切れるのに・・・。 あ! 扉の間に水を入れて、故障させるっていうのは!?」
「でも故障したら余計に開かなくならないかな?」
「あ、確かに・・・。 じゃあどうしたらいいんだよ・・・」
部屋に他に脱出できるところがないか見渡していると、頭上にある通気口を発見した。
「・・・あ、いいことを思い付いた」
ウィルを見てルーシィも見上げる。
「・・・え、もしかしてあんな高いところから出ようとしているの!?」
「それしか方法はなくない?」
「でも手すら届かないよ。 ここには登れるようなものも置いていないし」
「大丈夫、方法はある」
ウィルは両手を突き出し大量の水を出し始める。
「泳いで上まで行くんだ! この部屋を水いっぱいにするぞ! 俺が水を出している間、君は外へと繋がる隙間をどうにかして塞いでおいてくれ!」
「えぇ!? どうにかって・・・」
数十分後、部屋中に満たした水に浮かび通気口へと辿り着く。 中はほどほどに広い造りになっていて、二人は無事に脱出できそうだった。
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