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―――何だ、今の・・・?
目を瞑ってはいたが、何が起きたのかは何となく予想がついた。 魔法が消えた――――いや、無力化された。 だがルーシィとシリウスに目配せをしてみたが二人は首を振っている。
不可解な現象に場の全員が戸惑っていたが、ウィルは何となく似た体験をしたことを思い出していた。
―――今朝の魔法授業の時の現象?
男たちは慌てた様子で話し出す。
「もしかしてアイツもか?」
「いや、そんな情報はない」
「でも始末するのには変わりないぞ。 やれ」
―――ちょ、まッ・・・!
未だに現状が理解できず戸惑っているとルーシィが言った。
「さっきのは無力化の魔法よ! 水攻撃と無力化を上手く使って!」
「わ、分かった!」
何故自分が無力化できるのかは分からないが、二つの力を駆使し残った男を倒すことに成功する。 同時には使えないが無効化を使いつつ相手に近付けるため、接近戦でのアドバンテージを逆に握っていた。 その隙をついたのかシリウスが縄を解き男を打倒していた。 ルーシィの縄も解くと静かに近付いてくる。
「君は、一体・・・」
「もしかして、貴方も血の繋がりがあるの?」
「え?」
魔法無力化の家系はもう他に残されていないとすれば、それしか考えられなかった。 聞いてみるとルーシィとシリウスにも生き別れのキョウダイが一人いるらしい。
―――確かに俺はキョウダイは一人しかいないなんて聞いていない。
―――まさか二人だったのか?
ルーシィは懐から一枚の写真を取り出しウィルに見せた。 そこには既に離婚したウィルの母親が写っていた。
「え、どうしてその写真・・・」
「私のお母さんなの」
「いや、俺の母さんだよ!」
「じゃあやっぱり、君が生き別れたもう一人の弟だったのか・・・」
―――え、マジで・・・?
シリウスの言葉で三人が兄弟であると理解した。 まさかこのような形で会うとは思ってもみなかった。 それにいきなり兄弟といわれても簡単に受け入れられる精神状態でもない。
「もしかして、ずっとこの男たちから逃げていたのか?」
「あぁ、そうだよ。 君は無力化の魔法のことを伝えられていなかったみたいだね。 だから狙われなかった、安心したよ」
「・・・」
生き別れたキョウダイが大変な目に遭っていたと考えると喜べる状況ではない。 そのままシリウスは言った。
「逃げると同時に、俺たちはこの男らを恨んでいたんだ。 ・・・両親を殺されたから」
「・・・え?」
『両親ってもしかして、俺の母さんも入ってる?』と聞きたかったのだが、言う前に察したのかシリウスは強く頷いた。
「そっか・・・。 じゃあ、復讐ができてよかったんだな」
「そうだね。 無事、二人を救うことができたし。 これからは兄としてよろしく」
「こちらこそ」
シリウスと話している間にルーシィは男たちに近付いていた。
「おいおい、そんなに距離を詰めたら危ないぞ・・・って!」
ルーシィは土を使って男たちを動けないよう首から下を埋めていた。 それを見たウィルは驚く。
「ルーシィ! 土魔法を使えるじゃないか! どうして脱出する時に教えてくれなかったんだよ!」
「本当に非力なの。 上手くは扱えない。 お父さんが土属性で、少しだけ受け継がれていたみたい」
「そうだったのか・・・」
「ちなみに、あの部屋を密室にした方法は土を使って塞いだから」
「なるほどな」
ルーシィは立ち上がって言った。
「ウィル、土を湿らせて。 土が重くなって、より逃げにくくなると思う」
数時間後、通報をし終えた三人は解散した。 ウィルは自分の部屋へ戻ると父に通話を繋ぐ。
「あ、父さんか? 会ってきたよ、兄妹に」
『ッ、そうか・・・』
あまりの突然の出来事に父は驚いていた。
「兄妹は無力化できる魔法を使える。 だから政府に狙われていた。 俺に詳しく話すと、俺も狙われると思ったんだろ? だから言わなかった」
『・・・あぁ、その通りだ』
「政府の悪い連中は多少懲らしめたんだ。 だからこれからは、無力化をこの国に認めてもらおうと思って。 ・・・父さんも、手伝ってくれるよな?」
『もちろんだ』
この物語はまだまだ終わらないのだ。
-END-
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