オタクオタク

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オタクオタク

男は興奮していた。列に並びながら今か今かと自分の順番が来るのを心待ちにしている彼の姿をを見守りながら…。 「彼はいわゆるオタクである。日々、推しているアイドルのイベントや販売会の為に銀河を飛び回っている。今日も握手会の為に第三惑星を飛び出して、この第十四惑星まではるばるやって来ている。今日も既に三回握手しているが、あと十七回ほどこの『列に並ぶ→数秒間の握手→再び列の最後尾に並ぶ』を繰り返すのだ。これも毎回のことだ。 そして物販となれば一回につき約十前後のグッズを使う用、保存用、壊す用、予備と最低四つづつは買い揃える。それにライブがあれば必ず行くし、テレビやラジオの視聴と録画は絶対に欠かさない。彼がこのアイドルに使う費用は月に百万をゆうに超えているのだ。 『一体彼はどうやってこれ程の資金を工面してるんだ?』と思われる人もいると思うが、彼は非常に優秀で、三つの星外系企業の外部役員として報酬を得ている。彼が活動するには十分すぎる資金を得ていて、しかも仕事の全てはテレワークでこなしているので、いつどこに居ても仕事には支障が無い。 彼はこんな生活をオレが知る限り八年以上も続けている。もはや人生をアイドルに捧げていると言っても過言では無い。そして知る由もない。アイドルオタクの彼のオタクがいる事を。そう、オレは常に彼を見ている。オレはアイドルに夢中になっている彼を観察するのが、たまらなく好きなのだ。八年間決して彼に気取られる事なくこのオタクオタクとしての活動を続けている。そしてオレはこれからも、このオタクの彼のオタクとして生きていくのだ!」 「男はこんなオタクオタク生活を楽しんでいた。今となっては何故アイドルオタクの彼に惹かれているのかさえ分からなくなる時がある程だ。そして男もまたオタクオタクとして、アイドルオタクの彼に人生を捧げているのである。 だが、こんなオタクオタクな男も気が付いてはいない。このアイドルオタクを追いかけているオタクの男も常にその一挙手一投足をオタクオタクオタクの私に観察されている事を…。」終
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