花火と私とトライアングル

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「ひゃっ!?」  伸びてきた腕に抱きすくめられ、変な声が出た。刺される覚悟はしていたけれど、予想外の行動には戸惑ってしまう。 「、なんでそんなにびっくりしてるんですか?」  私の顔に頬を寄せた三角君が耳元で笑った。 「だっ、て……」 「綺羅さん、すごいドキドキしてる」  ささやかな胸の谷間に手のひらを当てた彼は、その両手で私の首を包んだ。頚椎(けいつい)からぐるりと回して余った長い指が、私の顎の下で交差している。  緊張で顎が上がる。ゴクリと唾を飲み込んだ私の喉を、三角君の指先が撫でた。 「素手で……首を絞めたら、ダメよ。手の跡から、足がつきやすい……」  死ぬのは怖くなかったのに、生殺しにされる不安で声が震える。すると、三角君のため息が私の髪を揺らした。 「やっぱり綺羅さん、俺に復讐されると思ってたんですね……?」  そう言って彼は、両手を離して私を解放した。  近づく人間の素性を確かめるのは、職業病のようなものかもしれない。懐いてくる三角君の身辺調査をした私は、彼の父親が8年前に亡くなっていることを知った。  明け方の河川敷で、ナイフで背中を刺され即死。迷宮入りした殺人事件は、忘れもしない私の初仕事だ。 「キャンパスで偶然見かけた先輩に一目惚れしたら、彼女は父親の敵だった」? そんな偶然、あるはずがない。どこから情報が漏れたかは分からないけれど、彼が私に近づく理由なんて、復讐以外には考えられない。
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