花火と私とトライアングル

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「ごめんなさい……」  再びうつむいた私の両手を取り、三角君は気遣わしげな表情で聞いた。 「綺羅さん……今でもその仕事、してるんですか?」 「半年前から受けてない。依頼を無視してるから、もう死んだと思われてるわ、きっと」  今思えば、母が死んだ3年前に、殺し屋など辞めてしまえばよかった。彼女が遺した複数の銀行口座には一生働かなくても生活に困らないほどの貯蓄があり、高校生だった私が仕事を引き継ぐ必要なんかなかったのだ。  でも。  母がコツコツ積み上げたのであろう人脈と信頼を水の泡にするのが忍びなくて、私はその後もずるずると依頼を受けてきた。それはたぶん、家業の八百屋や文房具屋を引き継ぐのと大して変わらない感覚だったと思う。 「闇の組織、みたいなのに入ってるとか?」  そう聞かれ、私は首を横に振った。 「誰とも、なんの繋がりもないわ。依頼を無視したからといって誰かが接触してくることもなかったし」 「よかった」  にっこり笑った三角君は立ち上がり、戸棚からグラスを二つ持って来て丸テーブルに乗せた。そして、ボディバッグから細身の水筒を取り出した。  さっき私の背中に当たったのはこれか。自分の勘違いにおかしくなる。
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