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イーヴルから見れば、意外な内容だった。まさかアイゼンが黒曜の事を気にするとは。それはそれでちょっと嬉しく楽しいと感じた。
「そりゃぁ、ね。皆が黒曜さんを俺に押し付けるからだろ?」
「だけどあいつ、起きて知らない場所だったら驚かないか?」
それは至極真っ当な意見だった。…一般的であれば、の話だが。
「あぁ、それは平気だよ。だって黒曜さん、ここで散々寝てるし」
「は?」
アイゼンは自分の耳を疑ったし、それを認識した自分の脳も疑った。
「待て、イーヴル。理解が追い付かない」
「だってここ黒曜さんちより司令部にも近いから、疲れてると黒曜さん、ここで行き倒れるんだよ。それとも何?アイゼンは何を考えたんだ?」
アイゼンとはこんな話をするとは思っていなかった。イーヴルにとってアイゼンは取っ付き難いと思っていたし、リアンがいる以上あまり喋る機会もなかった。
「何って何を」
「まぁいいよ。どうせ俺に黒曜さんをこぞって押し付けるあの部隊だ」
6隊の事務室のソファーで肩を並べて寝ていたりするのは見掛けた事がある。最初は黒曜がそれを許している事に驚いた。今日に至ってはイーヴルの足で寝る始末。随分と懐いたものだ。
黒曜の面倒事をイーヴルに任せた結果、黒曜はイーヴルには心を開いた。アオイやリアンにも開いてはいるが、イーヴル程ではない。アイゼンに至っては皆無だ。
「…なぁイーヴル」
「何?」
イーヴルを見る黒曜の表情は穏やかで、アイゼンと接する時とは大違いだ。それまで見た事のないような、素の笑顔を見せる。
イーヴルはイーヴルで、黒曜に対して対等だが優しく対応する。言うべき箇所はちゃんと言うし、仕事では仕事上での関係を徹底している。だが、プライベートになれば同僚の枠を越えた優しさが見て取れる。
リアンやアオイは常日頃、この光景を見ているから2人の関係を何となくで察している。だがアイゼンは離脱期間がある為に経過がわからず、いつの間にか2人の距離がおかしくなっていたと言う認識だ。
「俺がいない間に、何があったんだ?」
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