□番外編002/Happy birthday to Kokuyou.

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──寧ろあの言葉は僕が言うべき言葉。 白く曇った浴室を眺めながら、イーヴルが向けてくれた言葉を考える。ぶくぶくと半分湯船に沈みながら、イーヴルがしてくれた事を考える。 「黒曜さーん、起きてる?」 「起きてるよ」 初めてのタンデム。風を受ける事がこんなにも疲れるとは思わなかった。 イーヴルは良く気が付く。きっと僕が疲れてしまうのもわかっていたのだろう。早々に切り上げ帰宅をした。夕飯に食べたいものを問われ、少しだけ悩みシチューと答えた。 湯を張り、近くのマーケットへ買い出しに出た。帰る頃には風呂が出来ていると言う寸法だ。いつ寝てしまってもおかしくない僕を先に風呂へ押し込み、イーヴルはシチューを作り始めた。 ゆっくり湯に浸かっていると、そのうち良い匂いが漂って来た。 寝落ちて湯に沈みイーヴルに手間を掛けるのが申し訳なくて、風呂を上がる。濡れた髪を拭き、Tシャツとハーフパンツとパーカーを身に付けた。 「イーヴル…」 「黒曜さん?」 イーヴルがシチューを作る手を止めるのを確認してから、自分より少し大きい背中に顔を埋めた。その背中は陽だまりのように温かい。 「…イーヴル、ありがとう」 「ん?」 「…ずっと、僕の背中を守ってくれてありがとう。こんな僕の傍にいつもいてくれてありがとう。いつもそっと手を差し伸べてくれて…ありがとう」 「…」 「本当は僕がお礼を言わなきゃいけないんだ。初めて誕生日を祝って貰えた事、イーヴルにはたくさんの事をして貰っている。感謝ばかりなんだ…いつもは言えないだけで…」 「…黒曜さん」 「イーヴル、僕の方が『出会ってくれてありがとう』なんだ!」 イーヴルが僕の方を向く。手を引かれ、イーヴルの肩に顔が埋まる。 「黒曜さん、眠たいんでしょう。黒曜さんが眠い時って不機嫌か甘えるかのどっちか。いいよ、存分に甘えなよ」 「…うん」 僕は自分の手をイーヴルの背中に回す。イーヴルは僕の髪に指を通す。それからそっと撫でてくれる。 「シチュー、どうしても食べたくなったんだ。北方のシチュー」 「?」 「1度だけ食べた事があるんだ、北方のシチュー。駐屯地で食べたシチューが美味しかったから、また食べたかったんだ」 「そっか。今日の、美味しいと良いな」 あぁ。僕はずっと彼の優しさに知らず知らず甘えていたんだな。 ─────────────────
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