片想い

3/5
前へ
/18ページ
次へ
「家が近いって言うか…うーん」 なんと言おうか迷っているらしい九条に代わって言葉を発しようとした時、彼の口から耳を疑う言葉が飛び出た。 「実は、西とは同棲してるんだ」 王子様スマイルで彼女たちに笑いかけた九条は「ね?」と俺に同意を求めた。危うく俺もそのスマイルにやられそうになるのをぐっと堪え、言葉を紡いだ。 「ち…違う!同棲じゃなく、ただのルームシェア!ルームシェア!!」 俺はともかく、九条に変な噂が立つのは申し訳なかった。 俺がそんな事を思っているとは露知らずか、九条は「同じことじゃないか!」とあっけらかんと話す。 「な…なんだ、二人っていつも一緒にいるし、距離もなんだか近いし…もしかしたら付き合ってるんじゃないのかなー...なんて思ったりしたりしちゃって…アハハハ」 微苦笑を浮かべた彼女たちとの間に微妙な空気が流れる。このままでは不味いと思い口を開いた。 「…ち、違うって!そ、そんな訳あるはず無いだろ…!!お、俺たちは幼稚園の頃からの幼馴染で、昔から兄弟みたいに育ってるから、ちょっと距離とか近いように見えるかも知んないけど、ただの幼馴染!それに第一男同士だからっ!!」 自分で言った“男同士”と言う言葉がぐるぐると頭の中を回り廻った。 九条の方をちらっと見ると、彼はこちらをじっと見つめていた。怖いくらいに。その瞳に飲まれそうになった時、パッと顔を切り替えた九条は彼女たちに向き直った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加