片想い

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「そうそう、俺たちは男同士だよ?最近テレビとかでそういうの見たり聞いたりするようになったけど、西とはただの幼馴染だよ。それ以上でもそれ以下でもないよ」 頭を横に振りながらやれやれといった表情でそんなことを言った。 頭の中で反芻する“西とはただの幼馴染だよ”と言う言葉。 ーーあぁ、やっぱり友達以上の関係にはなれないんだ…。 ”それ以上でもそれ以下でもないよ” 友達以上の関係を望んでいるのは自分だけ。この感情は九条にも誰にも知られてはいけない。そう思った瞬間、じわりと目頭に涙が浮かぶ感覚がした。それを見られまいと俯く。自分が最初にあり得ないと言っておきながら、それを九条にまで肯定されると深く傷ついた。 そんな俺の前にふらっと立ちはだかった九条は、彼女たちと楽しそうに話し出した。俯いたまま彼女たちの笑い声を聞き、九条のハリのある声音を聞けば、もうどうでもよくなってしまいそうだった。 目に浮かぶ涙を乾かそうと何度も何度も瞬きを繰り返すが、溢れだす涙は止まることを知らず、ぽたぽたと床に水たまりを作る。
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