24人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女たちはそんな俺の事が見えていないのか気にも止めず、九条との話で盛り上がり、気が付いたときにはその場を後にしていた。
「西…」
滲んだ先には心配そうな表情の九条がいた。なぜ泣いていたのか問いかける訳でもなく近寄ると俺の顔を両手で優しく包み込んだ。そして、親指で涙を拭う。
「泣いてる姿は西には似合わないよ、ん?」
優しく微笑まれると勘違いしそうになる。脈が無いと分かったところなのに。
ぶわっと涙があふれ出しそうになった瞬間、グイっと引き寄せられ抱きしめられていた。
「ごめんね、西…」
ーー何がごめんなの?九条…。
口を開き声を出そうとするが出てくる言葉は文字にならないものばかりだった。
「うぅ…っ…」
ーーグスッ。
その度背中を優しくさすったり、トントンと一定のリズムで落ち着かせてくれた。こんなにも好きなのに感情を押し込めておくことはできなかった。
ーー九条、俺ずっと前からお前の事好きだったんだ…ねぇ、俺の言葉聞こえてたら返事して…?
「西…帰ろうか…」
心にぽっかり穴の空いたような喪失感を覚えた。重力に逆らえず、コクンと頷いていた。
最初のコメントを投稿しよう!