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「…っ」
夢見が悪かった。
目を覚ました時に感じる違和感。自分が泣いてると気づいたのは夢から覚めてしばらく経った頃だった。濡れた頬が忘れていたことを思い出させた。
彼女が出来たと聞かされた時、この世の終わりかと思うほどに心にぽっかりと穴が空いた。空しくて悲しかった。
自分が同性にしか興味を持てないと分かったときも同じだった。それは昔、父親に言われた言葉が原因なのかも知れない。
父親はよく言えば古風、悪く言えば頭の固い人間だった。
『いいか~陽介、お前は西家の長男だから、この家系を絶やすことはさせちゃいかんぞ』
酔うといつも同じ事を言った。そして毎回母親に窘められる。
『お父さん、飲み過ぎですよ。こんな小さい陽介に言っても分からないでしょう』
これも毎度の事だった。子供ながらに自分は家族を作らなくてはいけないんだと思っていた。そして、その理想は両親と思い込んでいた。だが、同性が好きと自覚したときからこの言葉が重くなった。父親の言葉が俺を苦しめた。
テレビで男性同士の恋愛を題材としたドラマや特集がなされると父は決まって”はしたない”と言い、チャネルを変えた。そして”気持ち悪い”とさえ言った。
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