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片想い
「九条のばかっ!分からず屋!!」
自分でもなんであんな事を言ってしまったのか分からない。頭で思っていることとは裏腹に口からは棘のある言葉ばかり出てしまった。
「もういい!一人で回るから!」
後ろから追いかけてくる気配があったが、足は自分の方が速い。九条が追いつけないスピードで園内を駆け抜けた。
「はぁはぁ…」
いくら足が速いと言っても現役を退いた今、長くは走れなかった。受験を迎え勉強に勤しんだ分、体力は完全に落ちていた。
優等生だった九条。彼と同じ大学に行く為、陸上の推薦を蹴ってまで苦手だった勉強を頑張り、無理と言われていた偏差値高めの大学に見事現役合格したのは約1年前。最初は九条と同じ大学に行けるだけで良かった。それ以上は望まないつもりでいた。だけど…。
「西と違って九条君ってモテそうだよね~」
大学に入りサークルにも入ると周りに女子が増えた。高校時代女子は同学年にいたが自分たちのクラスは男ばかりで女子とはそれほど接点がなかった。
「なんでいつも俺だけ呼び捨てなんだよ!」
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