第六章 ステージの上の王子様

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 茫然としながら寺西さんについて会場内に入る。  関係者用の座席だというボックス席のような場所に案内されて、そわそわと落ち着かない気持ちで寺西さんの隣に座った。  天井の高い、広い空間。  ここには一体どれくらいの人数が入れるのだろう。  ステージが前方、中央、後方と三つ設置され、その間と両脇を花道と言うらしい通路が結んでいる。  無数の観客たちの期待感で溢れる楽しげなざわめきと熱気でいっぱいの空間。  ――すごい。ここでこれからアイドルの爽が歌って躍るんだ。  みんな、爽たちが出てくるのをこんな風に待ってる……。  よく見るとほとんどの観客たちがペンライトや顔写真入りのうちわ、何か文字の入っているうちわを持っている。  アイドルのコンサートって、こんなかんじなんだなぁ……なんて感心しているうちに照明が暗くなり、前方のステージに設置された巨大なモニターにオープニング映像のようなものが流れ始める。  それと同時に観客が身体いっぱいから発せられるような歓声をあげ、その轟きに鼓膜が震えた。  寺西さんは隣でシートに腰かけたまま、腕組みをしてステージをじっと見つめている。  それからすぐにモニターにカラフルストリームのメンバーがひとりひとり映し出された。
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