第六章 ステージの上の王子様

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 爽がアイドルだと知ったあの日から、私はスマホで彼のことを検索することを避けてきた。  私の目の前にいる爽は、テレビで見る芸能人の爽とは違っていたし、爽自身が私に芸能人……アイドルとして見られることを望んでいなかったから。  だから映像に次から次へと登場するカラフルストリームのメンバーのことを私はよく知らない。  個性豊かな男性たちが代わる代わる映る度に、徐々に鼓動が高まっていく。  五人目。  画面に流し目で微笑む爽が現れた瞬間、それは一層大きく跳ねた。  目が眩むほどのスポットライトが縦横無尽に会場内を舐めて、前方ステージの天井付近から色とりどりの花々とLEDで飾られた輝くゴンドラが下降してくる。  そのなかにスパンコールとビジューでキラキラと輝くジャケットを着たカラフルストリームが乗っていて、すぐにアップテンポな曲が始まった。  リズムを刻む低音が耳から足元まで身体に響く。  私たちの座っている席からステージは遠くて、メンバーの顔をはっきりとは見えない。  先ほどのオープニング映像のモニターに、今度はカラストたちがゴンドラからステージに降り立つ様子が映し出されている。
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