第六章 ステージの上の王子様

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 ステージで本格的に歌とダンスが始まった。  モニターに映る爽。  スピーカーから大音量で聞こえる、聞き慣れない爽の歌声。 そこかしこから聞こえる「爽―!!!」という女の子たちの歓声。  なんだか現実味がない。まるで実感が湧かない。  あれは本当に爽なんだろうか。  爽じゃないわけがないのに、何故か夢を見ているような、遠い国のできごとをテレビで眺めているような気分になる。  ぼんやりしている間に曲はピアノの旋律が印象的なバラード調のラブソングに切り替わったようだった。  今度は観客たちは先ほどまでとは打って変わって、うっとりとした眼差しをステージに向けながら悲鳴をかみ殺しているようだ。  ――王子様みたい。  まるで王子様のような豪奢な衣装を身にまとったメンバー五人が踊りながらステージを移動してくる。  彼らが腕を振る度、飛び散る汗がライトに当たってきらりと輝く。  こんな、汗すら綺麗に見える人間がいるものなのか。  この降り注ぐ歓声を受け止めるために生まれてきたような、スター性。  まるで、お城の舞踏会だ。  王子様を一目見にきた、国中の女性たち。  なんて、非日常。
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