367人が本棚に入れています
本棚に追加
ステージで本格的に歌とダンスが始まった。
モニターに映る爽。
スピーカーから大音量で聞こえる、聞き慣れない爽の歌声。
そこかしこから聞こえる「爽―!!!」という女の子たちの歓声。
なんだか現実味がない。まるで実感が湧かない。
あれは本当に爽なんだろうか。
爽じゃないわけがないのに、何故か夢を見ているような、遠い国のできごとをテレビで眺めているような気分になる。
ぼんやりしている間に曲はピアノの旋律が印象的なバラード調のラブソングに切り替わったようだった。
今度は観客たちは先ほどまでとは打って変わって、うっとりとした眼差しをステージに向けながら悲鳴をかみ殺しているようだ。
――王子様みたい。
まるで王子様のような豪奢な衣装を身にまとったメンバー五人が踊りながらステージを移動してくる。
彼らが腕を振る度、飛び散る汗がライトに当たってきらりと輝く。
こんな、汗すら綺麗に見える人間がいるものなのか。
この降り注ぐ歓声を受け止めるために生まれてきたような、スター性。
まるで、お城の舞踏会だ。
王子様を一目見にきた、国中の女性たち。
なんて、非日常。
最初のコメントを投稿しよう!